21日に、近所の人の誘いを受けて大阪松竹座の歌舞伎を見に行きましたが、今回は初めての歌舞伎の観劇です。どんなものかは大方想像はついていましたが、大仰な表情やしぐさは大変演劇としては評価される要素だと思います。歌舞伎は、リアリズムに徹したドキュメンタリー映画ではないですから、ある面非常に不自然で作為的ですが、元来、演劇というものは、無表情や無愛想で笑いや怒りの感情の起伏が平坦なのでは、当然評価が低いですから、興業成績を高めるためにああいったきらびやかな服装と舞台装置と抑揚のある台詞と、緊迫した息を呑むような掛け合い、絶え間なく続く三味線と語りの歌声が創案されたのだと思います。優れた古典芸能です。
当日は、第一の演目は、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)でした。
渡海屋 大物浦(だいもつのうら)
渡海屋銀平実は新中納言知盛 吉右衛門
女房お柳実は典侍の局 魁 春
相模五郎 錦之助
入江丹蔵 種太郎改め 歌 昇
亀井六郎 桂 三
片岡八郎 種之助
伊勢三郎 米 吉
駿河次郎 隼 人
武蔵坊弁慶 歌 六
源義経 梅 玉
この段で面白いと思ったのは、相模五郎とお供の運平さんです。主人銀平に刀をへし折られて石でたたいて元にもどし、捨て台詞を残して立ち去る場面です。そのときに、魚の名前を立て続けに並べて駄洒落を言う場面が面白いです。
「やい、銀ぼう、サンマめ、イワシておけばイイダコと思い、鮫ザメのアンコウ雑言、
イナダブリ(田舎武士)だとアナゴって(侮って)、よくいタイメザシにアワビたな(痛い目に遭わしたな)」
「サバ アサリ ナマコ(さはありながら) コノワタ(このまま)に、黒鯛(ケエズ、帰る)というは クジラしい(悔しい)。マグロはカツオ(負けるは勝つ)と言いながら、ナマリ(あまり)と言えば…」
よくこんな駄洒落の連続技を考えたものだと感心します。
あと、あっと驚いたのが、謡曲の歌声と同時にガラっと障子屋台が開いて、銀平がみごとな白装束の狩衣装に銀の鎧、銀の兜で登場してきたことです。腕に抱いているのは、赤い衣装に着替えた安徳天皇です。
あと、印象に残っている場面は、銀平が義経一行をねぎらって港の船に送り出す場面です。蓑のレインコートを全員に貸してあげて、雨風をしのぐように用意するところです。
はじめから、義経一行だとわかっていて、五郎を追い出して海戦で義経を正々堂々と討ち死にさせようともくろむ銀平=知盛の魂胆ですが、次の大物浦(だいもつのうら)の段で、大きな碇を身に巻きつけて壇ノ浦に沈む場面は見ものです。
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このように、初めて歌舞伎を観劇しましたが、大、印象に残る場面が多かったです。