IT教育の課題は、朝日新聞の連載記事によれば、次の2点であります。1点目は、著作権法の壁です。あらゆる著作物の教育利用についての著作権法は、アメリカ・ヨーロッパ諸国・、韓国などでは、世の中の共有財産として次世代を担う子どもたちのために普及させることを最優先しており、開発の手続きが簡略化されています。そのため学術関係のコンテンツは、非常に早いスピードで開発されて、殆どの学校に導入が進んでいます。ところが、日本では、一般の著作物に課される著作権法をそのまま学術・教育関係にも適用しているので、たとえばeラーニングといわれる通信教育の教材なども制作・流通させるための手順やルールが非常に厳格で煩雑すぎるので、開発者が自由に作りにくい仕組みになっており、このことがネックになって、どうやら開発意欲を減退させているのではないかとまで言われています。
2点目は、諸外国と比べて顕著なのは、日本の教師や指導者の特質として非常に個人商店的な発想が強すぎるということです。つまり、自分が開発した教材はあくまでも自分の著作物として厳格に著作権を主張して、ネットに載せないかあるいは個人のwebサイトでの公表にとどめる傾向があります。よって、eラーニングなどの共通のプラットホームに載せて流通させるようなオープンな発想に乏しいということです。
結局、以上の2点の克服すべき課題が明らかにされていましたので、私は、そこまで日本のマスコミが分かっているんだったら、当然、文部科学省は百も承知だろうと思うのです。そして、文部科学省は、著作権法の改正を行って、ネット上の教育コンテンツの流通と活用が、迅速且つ広範に広がる方向で経済産業省に検討してもらうよう、強力に働きかけるのが当然ではないのか?これがなされていない現状は、実に憂うべき状況であります。こんなところでいつまでも足踏みしているのは、旧態依然たる縦割り行政の弊害ではないかと思います。いち早く文部科学省が音頭をとって予算をつけて、教科書会社にeラーニングのような通信教育のネットワークを開発させたらいいのです。そのネットワーク上では、著作権の手続きを思い切り簡略化すればいいのです。そうして制作したweb上の教科書も、紙の教科書と同様に無料化にしたらいいのです。そういった、思い切った政策を政府が取り仕切らないと、いつまでたっても、IT後進国のままであろうと思われます。すなわち、黒板とチョークを使った明治時代以来の伝統的な授業が一番よいということになってしまうのです。そうではなくて、教育のIT化の世界でも、国際競争力に打ち勝つ人材を育て上げなければなりません。